その指は炎を紡ぐ
その心は炎を紡ぐ
闇夜の森へと躍り出た影を狙う炎は
意思を礎に磨かれた狩人の矢
否、運命の矢とでも呼んだ方がいいか
避けられないのだから
逃れられないのだから
撃たれた者も、撃った者も
炎は決して捕らえ縛る事はない
炎は払うモノ
だから捕らえるのは瞳の役目
監視者
故に迷いは許されない
もしも哀哭に囚われ
もしも憤怒に囚われ
もしも夢に囚われ
役目を忘れるならば
共に歩む者が
監視者を断つ
―――監視者の監視
見守り、傅き、従い、護る
常に監視者の少女の傍らに在る
遥かな西方から来た神であり魔である存在
――――ラヴァ・・・
少女は薄く眼を醒ます
夢に溺れいた
手は彼に優しく添えられている
闇は心地よい
中でも少女は
その中で揺らめく
闇の衣の腕の中が心地よかった
それが自らの運命と共に極自然な事
――いつかこの腕が運命を断ち切る時がくるのかしら?
そんな事を思いつつ少女は何時ものように告げる
「行こうラヴァ・・・」
――――白柳学園
あたしは眠っていた
そう眠っていて夢を見ていた
夢は愛しく。甘美な誘惑を醸し出す
ああ、このまま逝けたらどんなに楽だろう
死ぬならこう死にたいものだ
まどろみの中で声がする
「……て…」
誰かが呼んでいた
「お……よ」
ああ、解っているよ
そう解っている。この安らいだ気分はもうすぐ終わる
―――要するに、授業が終わったのだ
起きなければならないだろう
というか起きたい
正直心は安らぐけど腰が痛くってしょうがないのだから
無理な体勢は身体に良くない
「おはよ」
呼びかけてくれた友達に挨拶をした
目覚めの挨拶ってのは大事だ
「おはよ。…じゃなくって。テスト前なのにだめだよ」
あたしと同い年、あたりまえだけど。
彼女はプンプンだった
因みに彼女の名は蘭と言う
「美野ちゃん、なんでそれで点数いいのかなぁ」
「努力の差」
現実をあっさりと答えてあげる
「してるの?努力」
あたしを何だと思っているのか
「してる」
「うそ」
即答に即答で返されてしまった
意外に頭の回転が速いなぁ、っとどうでもいい事を考えてみる
「いつもの所いこ」
彼女にとっても、どうでもいい事らしい。学校はさっさと出て
クレープ屋さんにでも落ち着こうという事らしい。
「テスト前じゃ…」
ふと気になった事を言ってみた
「いまからやっても間に合わないもん」
そりゃそうだ。ごもっとも
真実は駄弁りたいからだろうが、まあ往々にして真実は事実に打ち消されるものだ
そんなワケで、あたし達は立派に学生をしていた
もうどうしよもないくらい学生だ
うん。我ながら完璧に近い
適当に喋りながら歩く。いつものように。実に自然な風景だ
――――ふと目に入る光景。あの白い影は…
人?
少女?
一度瞼を閉じて開くと其処には何も居なかった
「それじゃ、気を付けて帰るんだよ」
「うん。じゃあ、また明日」
適当に駄弁って、適当に時間は過ぎて、結局陽は落ちる頃合に帰る事にした
何時もの、そして、極々自然な一日だ
「ただいま」
返答がないのも、いつもの事だ
テンションが下がっていくのが自分でも良く解る。両親などは居ない
どうやって生活しているのかを問われることと思うが、なんのことはない。
親戚からの仕送りだ。彼らに関しては感謝しておこう。
たらい回しされた事なんて今となっては些細な事だ
何もかも、いつもの事、ただ、変化ってものは、いつもの中に突然現れるのだ
そう、たとえば―――
屋根に誰か居たりとか・・・
それが解ったのは、あたしが住んでいるアパートはコの字を描いていて、丁度反対側に居たから
「・・・・誰かな」
危ない事この上ない、ただ、いつもなら割と本気で心配する筈なんだけど、なぜか、心配というものは沸いてこなかった
「・・・気になるよねぇ」
もはや、癖になってしまった独り事を吐きつつ、止せばいいものを
あたしは正体を確かめるべく屋根に昇った
――――少女が居た、誰か他にも居たような気はしたのだけど・・・
「こんな所でなにしてるの?」
当たり前の疑問、ただそれは、その言葉は、確実にいつも発している言葉とは違っていた
不可思議な言葉だった。ほんとに其処に居る者に話しかけているのかが、曖昧。
そもそも、何しているのかが聞きたいのではない
「・・・・貴女は・・・誰?」
が本音だ
少女は答えない
気が付いては居るはずだ。こちらを見ているのだから・・・。
―――金色の瞳で・・・
「・・・・・」
沈黙が支配する
十分?いや、三十分?。既に時間感覚などはなく、酷く永い時間そこに佇んでいた
「あなたこそ、こんな時間に何を?」
質問を質問で返す少女に、不思議と苛立ちなどは憶えず
「貴女が此処に居たから、落ちると危ないし、自殺でもしようとしてるんじゃないかと」
そう返していた
「自殺?」
不思議そうに少女は問う。あたりまえだ。何せ自殺する人に近づく類の顔はしてないはずだから
「いや、自殺しようとしてるなら、話相手にでもと思って」
「クスクス・・・・はじめまして」
少女は少し間をおいて、そう言った
「はじめまして・・・・美野って言います」
返すついでに名乗る
「私は・・・・美夕・・」
あたしと少女との不思議な初対面は、こうして終わった
次の日の朝
軽く雨が降りそうな気配の空の中、いつも通りに教室に入る
・・・・・・・
「おはよう」
「・・・・おはよう・・・・」
蘭の挨拶に素直に・・・は答えられなかった
別に、調子が悪いわけでもない
とんでもなく普通に
とんでもなく自然に
彼女―――美夕が居たからだ
なんで?はっ?
ワケがわからない。確かあたしは昨日彼女と・・・・屋根の上で・・・・
???
もう疑問符しかないんだけど・・・
「貴女・・・・昨日・・・」
どう問いかけたら良いものだろうか?判らないまま発した言葉は
そう質問にならない質問をしていた
「あ、知り合いだったの?わたしは昨日の夜にね、会ったの」
そういって蘭は、自分が酔っ払いに絡まれて困っていた所を助けてもらった事を語った
「・・・・はぁ」
つじつまは・・・・あってる?
まぁ、一応はあってるか・・・
「どうしたの?」
「・・・はぁ」
思わずため息をついた
もう、悩んだって仕方ない。彼女は目の前にいるんだし・・・・
驚いていたって始まらない
「??」
「美夕って、この学校だったんだ・・・」
「ええ、一昨日隣のクラスに転校してきたの」
一昨日・・・はて?・・・ああ、転校生が来たというのは
・・・・聞いた?
「ふ〜ん」
「どうしたの?美野ちゃん」
「なんでもないよ」
なんでもない・・・・わけがない
だって、そんな話は初耳だ。こんな可愛い娘なら噂だってする
幾らなんでも隣のクラスの転校生というのは記憶してても・・・
なんか、昨日の夜といい、自分の記憶が信じられなくなる気がする
まさか・・・・この年で記憶障害とか?
・・・おいおい・・・滅茶苦茶いやだ
病気とかしかないだろう。この年の記憶障害は・・・・まじで勘弁して欲しい
・・・聞いた。ような気もするから、あたしの記憶はどうなったのやら
まぁ、いいか
楽天と言うなかれ、もともと、あたしの売りはそんな性格にあるわけだ
むりやりに違和感を排他するというのは、昔から得意だった。
蘭と美夕は意外にそりが合うらしい
楽しそうに会話していた
そもそも二人とも根は大人しいから、そこらの女子みたく五月蝿くはないけど・・・
「ねぇ、この学校の噂って知ってる?」
ふと聞いてみた
「知らないわ。教えてくれる?」
「・・・・」
あれ?蘭は一瞬すごく強張ったように見えた・・・
えっと・・・とりあえず美夕に説明する事にした
ここの学校には不思議な現象、ホントいうと不思議な「事件」だと思うけど、それがある。
何処にでもある学校の怪談のようなものなんだけど、実際に事件として起きている「怪異」
しかもそれが二つあるのだ
一つ、「事件」というのはこっちの理由。
理科室の骨の模型が「実際の人の骨」に代わっていた事。こちらは、ちょうど一年前の話
一つ、音楽室のある部屋を中心に学校が一定時間無音状態になること
これが現象・・・つまり怪異
「理科室のは一度、今から一年前の、音楽室の件は今までの噂では七回ほど変速的に起きてるの」
「それで、後はお約束。本物の骨だった人の幽霊の性って噂」
「・・・ふ〜ん」
美夕は、あたしの説明を聞いて、考え事でもしてるかのように頷く
何を考えてるかは、あたしなんかには解るわけないし予想もつかない
「ねぇ、音楽室はどこに?案内してくれない?」
転校生である少女は、そんな事を言い出した
まぁ。転校してきて早々、そんな話聞けば行ってみたくもなるかな・・・
「うん、いいよ」
あっさり返事して昼休みに行く事になった
―――食っていうのは楽しいモノの筈なんだけど・・・・
同時に戦争だ。学生の戦争というのは受験だけではない
お約束中のお約束。「購買戦争」に勝利し、確保、及び、すばやく離脱する
「おかえり〜」
「はぁ。はぁ・・・ただいま〜」
息を切らして帰還した、あたしを出迎えてくれる蘭。
因みに、この娘はお弁当というモノを持っていたりする。
我が親友は、料理作るのが最近の楽しみの模様
「美夕は食べないの?」
座ってるだけの彼女に聞いてみた
「ええ・・・気にしないで」
「ダイエット?美夕には必要ないと思うけど」
本心だ。この娘、今までは不思議さが勝っていたけど見ると、ホントに可愛いし
とか思ってたら・・・
「ふふふ、美野はよく食べるわね」
とか返された
「カレーパン二つにすぺしゃるコロッケパンにサンドウィッチ…」
蘭が、あたしの前に転がってる戦利品を眺めて言う
だが、甘い。すでにメロンパンが一個ないことに気が付いていない
・・・・いいじゃん
育ちざかりよ?あたしら・・・あたしは色気より食い気を優先している
二人とも何やら呆れたような眼差しを向けてくる
「ほっといてよ。楽しみと言ったら、このぐらいでしょ」
「あいかわらずだね、美野ちゃんは」
だからほっとけって
そうこうしている内に食べ終わった
さて・・・・
「ここ?」
「そうよ。鍵はついてないし、あまり広くないけど」
「・・・・」
黙っている美夕は、おもむろに入っていく
怯えてる様子は全くない、ここらへんは最近は特に気味悪がって
みんな授業でもないと近づかないのに。
「へへへ」
蘭が眼を輝かせて中に入る。そのままピアノの所まで行って、弾く
そう、あたし達は別に例の事など関係なく、たまにこうして弾きにくるのである
あたしは弾けないけどね
流れる旋律は優しく、暖かい・・・・
彼女のピアノは大好きだったりする
「すてきね。彼女」
「うん。あたしは好きだね」
「私もよ」
美夕もピアノに意識を向けていた
あたしには似合わないかもしれない雰囲気なんだけど、とても穏やかな
とても綺麗な時間だと思う。三人で、くつろぐ今
チラリと隣を向くと年相応の顔をした少女が静かに聞いていた
演奏は中盤に向かう、聞いてきた曲の中では二番目ぐらいに多い曲
名前はしらないけど、少し中盤から切ない旋律になる
ゆっくりと
ゆっくりと奏者は腕を操り
そこで、止まった
なんども奏者は弾こうとするものの、音は・・・・でなかった
これが!!
体験するのは初めてだった。いくらなんでも、ここまでとは思わなかったけど・・・
「
声なる音すら出ない、出てるのかもしれないけど、聴こえない
風の音も、校庭の喧騒も、あたしが立ち上がる時の音まで
!!!
パニくった、普通に混乱してる。
となりをフト見ると
そこには
・・・・誰も居なかった
美夕!!・・・・
叫んだのだろうか?聴こえないあたしは
自分の声すら本当に出ているか解らないんだけど・・・
そのときだった
あたしは
声を「聴いた」
みの・・・・と
誰?
誰が呼ぶのか・・・・あたしの名を呼んだ声
あっ・・・だ・・・れ・・・だっけ?
コ・・・・ウジ・・・・
あたしは開けてはイケナイ記憶箱を開けてしまった
――――ラヴァ!!
少女は名を呼ぶ。
これは空間、誰かのクニに捉われたのだ
音の無い世界から必死に喚んだコエに闇が反応する
(確かに神魔の気配なんかなかったのに・・・)
彼女は少しだけ焦っていた。音が亡くなって捉えた気配を辿れば此処にいた
骨。骨、骨、骨、骨、骨
四方八方を骨に囲まれた音楽室だった。彼女、美夕にしてみれば不思議では無い
ただ。この空間を感知出来なかったのが解らない
確かに今感じているのは紛れも無い監視対象、はぐれ神魔なのだから・・・
目の前に現れる外套衣を纏った者が現れる。と同時だった
骨は意思を以って、明らかな攻撃意思を以って彼女達を襲う
ここでも音は死んでいた
美夕の呼びかけに答えた彼、ラヴァは、その爪を以って彼女を護る
四方八方の全方位攻撃を彼の爪は難なく捉える・・・筈だった
骨は堅く、鋼よりも硬く運命を断つ爪を以ってしても切れない
ラヴァはひたすらに迎撃する、一撃で断てなければ二撃。骨は三撃を食らいようやく無効化した
美夕は援護に回る、如何な強度を誇ろうとも彼女の炎ならば或いは止められる
腕を一閃、回転を加えながら、全方位に炎を放つ
そして彼女は、それを凝視した
確かに骨は止まったが・・・炎はケサレタ
その音に。否、コエによって
叫び、名を呼ぶ声、「美野」
!!!
ラヴァが鬼門からの干渉を感知する
とっさに美夕を腕の中へ
瞬間
空間の消滅が始まる
神魔の気配が薄れて消えていった
アケテハイケナイキオクバコ
――――浩二・・・
あたしは自転車に乗っていた・・・彼を。文字通り「彼」を乗せて
年が年だからさ、あたしが漕いでて、小さめの浩二は照れくさそうに
あたしに、しがみついていた
「美野って力あるよねぇ」
「女の子に、そういうことは言うもんじゃないでしょ」
特に最近はそうだ。彼は背が伸び始めているし、あたしは結構頼りにしてたりする
あたし自身が結構大きい方だから差はあるんだけど・・・
掴んでくれてる手は優しくって充分大きいんだから・・・
誰よりも好き・・・
ああぁ・・・・
この後は視たくない。いやだ、いや、いやいやいやいやいやいや
赤い血が流れて、流れて
その頭から零れたモノが
いや
いや・・・・・・・・イヤだって言ってるのに!!
記憶は閉じてもらったのに・・・・
周りも閉じてもらったのに・・・・なんで?
壊れる
あたしが塗り替えた過去は、音のない世界で割れて剥れ落ちる
終わっちゃうよ・・・・それは勘弁して欲しい
だから、あたしは、また逃げる事にした
自分の名前が聴こえたから・・・
「美野ちゃん・・・」
蘭・・・ううん、違う・・・・
あたしの願いを叶えてくれたヒト
「もどっちゃった」
だから戻して、さっきまでのあたしに
「そう・・・なの・・・」
「もう一度」
アノ時みたく
「できないの・・・もう見つかっちゃったし」
「・・・・」
うそ・・・・
「ほんとはね。わたしじゃないもの・・・」
「・・・えっ」
「そんな力持ってないの。わたしは・・・」
「・・・」
「兄が・・・浩二だけが持ってたもの・・・」
「え・・・」
兄って・・・・浩二って・・・兄妹?
「わたしは隠しただけ、全てから・・・それしか出来ないの
兄の遺言を守っただけ・・・ホントは憎かったのかも・・・貴女が・・・」
「・・・・ど・・・うして?」
「・・・わたし達は、兄妹は常にヒトとして隠れてきて、生きてきた
赤ちゃんから老いて死ぬまで・・・くりかえし、くりかえし。
最大限に力を使って、いままでバレたことなんてなかったし
そうするもんだと思ってたの・・・兄も、わたしも
いつからは解らないけど、かなりの回数の人生を生きたの
何度も前の記憶を隠して、そして周りも隠して、兄もわたしも
それが当然だと思ってた・・・・いつも、いつも・・・
でもね・・・今回でね、貴女にあって兄は変わったのよ」
「・・・」
「・・・多分、これは貴女自身が隠していたことなんだけど」
「ぇ・・・」
「あの時、頭から命を零していたのは貴女の方。そして・・・・」
―――「そういうこと」
「ぁ・・・」
「神魔さん・・・やっと見つけた。一応聞こうかしら、闇に還る気はない?」
疲れたようすを見せて着物を着た美夕が言う
「美夕・・・・皮肉ね。美野に美夕か・・・わたしの真名が夕野って言うんだけど
ま、いいや、この娘、まだ人なんだけど・・・美夕
わたしみたいな存在にでもしてあげましょうか?」
いつの間にか、あたしは蘭・・・夕野に捕まっていた
無駄なことなんだけど・・・・というか
さっき自分で、そういうことは出来ないって言ってなかったっけ?
怖さなんか生まれない。これは・・・・同情?哀哭?絶望?憤怒?・・・
違う・・・もっと複雑な感情・・・
「悪いけど、彼女の事は、関係なしに言ってるわ・・・」
「ほんとうに?」
「ええ」
「・・・ねぇ・・・監視者ってどんな気分なの?」
「・・・・気分?」
「兄が消える直前に聞いたのよ。わたし達みたいなのを狩るヒトがいるって」
「それが、おしごとだから・・・はぐれ神魔を闇に還すのが運命」
「・・・・・なんで?」
夕野は泣いていた。それが悲しみなのか、それとも憤りなのかは知らない
「・・・じゃあ、私からも聞いていい?」
「・・・」
―――どうして彼の消滅を認めないの?
「だって!・・・だってぇ」
「どうして人の生命力を奪ったの?無理やりに留めて・・・彼は苦しんでるわ」
苦しんで?彼・・・浩二が?
「ねぇ、夕野・・・・貴女も限界じゃない?・・・炎と爪も「隠した」のなら・・・ 」
「限界よ・・・」
「・・・」
色々起き過ぎて喋る気なんかない
でも・・・聞いとこうかな・・・聞けることは・・・・
「蘭・・・・なんで今まで・・」
そう。別に彼女は、あたしと友達になる必要なんてなかったんじゃないの?
「楽しかったの・・・美野ちゃんと居られて・・・だから嫌・・・なのよ・・・」
そう言って蘭は手を・・・あたしを離した
「ばいばい」
意識が・・・・消えていく・・・・
消えていく意識の中で
ピアノの音が聴こえた・・・そして
「・・・・お願い・・・ピアノごと燃やして・・・・」
知らない娘の声が聴こえた
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――はぐれ神魔よ・・・闇へ・・・
痛快なまでに・・・・痛い・・・なんか痛いなぁ・・・
腰?・・・・ううんモット上だ・・・・というか全部
自分の身体に意識を向けてようやく気が付いた・・・・泣いてる
あたし泣いてる・・・・
「あなたの涙は隠されていたの・・・記憶も」
知らない誰かが其処に居た。着物かなぁ・・・なんか着てる少女
涙で、ゆがんでハッキリ見えない
ゆがんだ向こうには・・・・・骨・・みたいなのが見える
ようやく、その言葉にあたしの意識が追いついた
そして・・・・・涙と同時に溢れたのは記憶だった・・・・
酷くチグハグだったりするんだけど・・・
「逃げないで居られる?」
あたしは・・・・
視界を、ぼやけさしている涙
・・・・・ワカンナイ・・・・でも、もう・・・
「耐えられないなら、夢をあげるよ?」
「いらない・・・多分」
ほんとに多分・・・自信なんてない
だけど・・・・
涙が出てくれるんだったら、或いは大丈夫かもしれない
ぼかしてくれるんだったら、或いは平気かもしれない
そんな考えが頭を巡ったから・・・
「そう」
少女が微笑んだ気がした
再び、あたしの意識は落ちた
――
「大丈夫ですか?」
「あの娘の記憶は・・・元には戻らないけど、とても強い子だから」
「いえ、あなたの方です」
随分と夕野を還すまでに時間がかかっていた
「・・・・平気よ。ラヴァ」
そういって微笑う表情に、少し肩が軽くなる
美夕に架かるのは罪なのか罰なのか
或いは、その両者か・・・・
・・・・心の重みは・・・・
いつか、解かれる時がくるのだろうか・・・
もしも、いつか彼女が、この蓄積するものに耐えられなくなったなら
その時、この爪は・・・・・
・・・・私は・・・彼女に付き従う
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